献杯時などに気を付けるべきマナー等、徹底解説

「献杯」と「乾杯」は意味も由来もまったく異なるものです。お通夜やお葬式のあとに行われる会食の席で静かに杯をささげるものですが、献杯の際にはマナーがあります。
またその際には、喪主や、喪主に頼まれた人は挨拶をしなければなりません。その時に実際に気をつけたい献杯のマナーと挨拶の例文について解説をしていきます。
例文あり・献杯のマナーと挨拶
「乾杯」とどう違うの?献杯とは何か
「献杯」とは、今日では故人をしのんで杯をささげるという意味になっています。
それでは、普段の「乾杯」とは何が違うのでしょうか。
乾杯は、もともと西洋から入ってきた文化でした。王様や貴族など、身分の高い人たちが開くお祝いの席や宴会などで、ワインや、お酒の入ったグラスをぶつけ合うようになったのがはじまりと言われています。
これはなぜかというと、身分の高い人たちには暗殺のリスクがあるからです。そこで、グラスに毒が入っていないか確認するために、お互いのグラスをぶつけ、中身を混ぜ合わせるようになったのが、今の「乾杯」になりました。
いっぽう、「献杯」は日本で古くからあった儀式です。
神道では、お酒は「お神酒」ともいい、神様へのお供え物のひとつでした。そのため、豊作を祈るなどの神事や、三三九度などに見られる儀式、あるいは戦に出る前にお酒をくみ交わすなど、人生の節目や儀式にお酒は欠かせませんでした。
お葬式やお通夜などでの献杯は、故人に敬意をあらわし、お酒をささげる儀式です。西洋のものではなく、どちらかというと日本古来の儀式に近いものです。楽しく社交的な乾杯とは意味がまったく違うため、「乾杯」ではなく「献杯」といいます。
もともと神道が由来の献杯ですが、仏教が庶民に普及する過程で、神道や古来からの自然信仰・文化が混ざってきたと言われています。
そのため、仏式のお葬式やお通夜でお酒を飲むことも献杯というようになりました。
献杯って具体的にはどうやるの?
献杯は、「精進落とし」「通夜振舞い」などと呼ばれる、会食の席でするものです。
会食に招かれた人は、献杯の合図があるまで食事に手をつけてはいけません。
献杯のしかたですが、会食の席に全員がそろったのをまず確認します。酒の入った盃をお位牌の前に置いてから、全員にお酒を注ぎます。はじめに喪主が挨拶をします。次に喪主が依頼した、代表者による献杯の挨拶が続きます。この手順は、お葬式・法事の場合も基本的には変わりません。 ただし、地域や宗派によって行わない場合もあります。
献杯の挨拶や話がある間、料理には箸をつけずに聞きましょう。挨拶が終わったら、献杯の合図があります。喪主や代表者の「献杯」という発声に続き、他の人も唱和します。その際、合掌や黙祷をすることもあります。
その後、喪主のすすめで食事をはじめます。お開きの挨拶があるまで、出席者は静かに故人の思い出などを語りながら食事やお酒をいただきます。
ふたたび言いますが、乾杯とは違います。「盃やグラスをかかげる」「グラスを鳴らしたりぶつけたりする」のはご法度です。
もちろん、飲み会ではないので一気飲みをしたり、拍手などをして騒ぐのは論外です。
献杯の際には、盃を上げてもせいぜい胸元から顔くらいの高さにします。
また、献杯の発声も控えめにし、静かに「献杯」と言います。合図のあとの拍手やかけ声も必要ありません。
その他は特に細かいルールはないので、グラスを鳴らさない・高くかかげない・騒がないなどが守れれば、大丈夫です。
献杯の挨拶を頼まれた時
時々、喪主にかわって献杯の挨拶を頼まれることがあるかと思います。
献杯の挨拶は、誰がするという決まりがないため、喪主や遺族でなければ、故人と親しかった人や会社関係に頼むことがよくあります。挨拶は、前もって依頼されるので、あわてないように内容を考えておきましょう。
献杯の挨拶は、故人をしのぶためですが、同時に食事をはじめる合図でもあります。挨拶の時間は1~2分くらいを目安に、簡潔に済ませましょう。簡潔な自己紹介と故人との関係を述べ、会葬へのお礼をした後に、「それではご唱和お願いします」と献杯をうながして終わらせるようにします。
挨拶文には、「忌み言葉」を入れてはいけません。
「死ぬ」などの直接的な表現、「重ね重ね」「またまた」など不幸を繰り返すようにとられる表現は使わないようにします。
また、宗派や宗教にそぐわない言葉も避けます。
亡くなるとすぐ、阿弥陀様のもとに行くとされる浄土真宗で、冥土の旅の無事を祈る「ご冥福」といった言葉を使わないなどの配慮が必要です。
具体的な例文
献杯の挨拶は、前もって準備しておくといいでしょう。
簡単な例文をご紹介します。
故人の親族
故○○の~でございます。本日はお忙しいなか、お集まりいただきありがとうございます。おかげ様で葬儀も無事に終え、~も安心しているでしょう。今日は~の思い出を語らいながら、冥福を祈りたいと思っております。
それではご唱和お願いいたします。献杯。
故人の友人
故人の友人、○○と申します。故人とは学生時代からスポーツなどを通して親交を深めてまいりました。今でも信じられない気持ちでいっぱいですが、彼の冥福を祈りたいと思います。それでは献杯させていただきます、献杯。
喪主による挨拶
本日はご多忙のところ、お集まりいただきましてありがとうございます。故人(続柄)も安心していることと思います。ささやかながら、献杯の席をもうけさせていただきました。酒の好きだった故人のためにも、思い出話をきかせていただければと思います。それでは皆様ご唱和ください。献杯。













