音楽葬ってどんな曲を流してもいいの？メリットとデメリット

2018.07.10

好きな曲を流すと著作権侵害？意外と面倒な音楽葬

近年では既存の宗派や宗教にとらわれない、自由な葬儀を希望する人が増えています。そこで墓標のかわりに、シンボルとなる木や植物を植える「樹木葬」などの自然葬、家族だけで行う家族葬など、葬儀の形式も多様化してきました。

「音楽葬」もその一つです。以前から一般的な仏式の葬儀後や出棺の際に、クラシックの葬送曲などを流すことはありましたが、近年では故人の好きな曲や歌で送り出そうと、より自由な選曲をする傾向にあります。

音楽葬とは、一言でいうと「音楽を通して故人を偲ぶ儀式」です。旧来のような仏式の葬儀では焼香や挨拶などの合間に音楽を流したり、無宗派・無宗教での葬儀ではスライド写真などを見ながら、歌や音楽で故人の生涯を振り返ります。

使用される音楽はクラシックが多いですが、選曲は基本的に自由です。かつてのバンド仲間だった故人に、若い頃ロックバンドを組んでいた友人がエレキギターをかき鳴らす葬儀もあります。

音楽葬は、その名の通り音楽や歌を中心とした葬儀です。音楽を流したり演奏することが主体なので、一般的な葬儀のBGMとして音楽を流すことも、全くの無宗派・無宗教で行う「お別れ会」「偲ぶ会」といった形式でも音楽葬にすることができます。

音楽葬のメリットは、歌や音楽を通して遺族や参列者との一体感が生まれやすく、より深く故人を偲ぶことができる点です。形式も自由なので、既存の宗派や宗教での葬儀にも、無宗派での葬儀にも広く応用できるでしょう。

また無宗派での音楽葬は、黙祷や喪主の挨拶にはじまり、故人の生涯を描いた映像とともに音楽を流したり、故人の好きだった歌を歌うなどした後、献花や焼香をすることが多いです。

音楽葬の流れは、故人や遺族の意向によっても異なります。その為に参列者が作法に戸惑ったり、周囲の理解を得にくいのはデメリットです。また仏式の葬儀では、寺院に音楽の使用を断られることがあるので注意しましょう。

音楽葬は故人の生き方、故人との思い出を分かち合える葬儀です。しかし音楽葬には大きな問題点があります。それは著作権です。日本ではJASRAC（ジャスラック）という団体が音楽に関する著作権を管理しており、著作権のある歌謡曲やロック、Jポップなどを無断で流したり、演奏することができません。

営利目的で音楽を使用する場合は、著作権料をJASRACに支払わなければなりません。そこで音楽葬を行う葬儀社では、あらかじめJASRACと年間契約を結んでいることがあります。しかし全ての葬儀社が契約しているわけではありません。まずは希望の楽曲を葬儀で使えるかを葬儀社に確認しましょう。

JASRACとの契約がない葬儀社を通して、遺族側が持ち込んだ音源・知り合いのバンドや演奏者などを呼んで音楽葬をする場合は、特に注意が必要です。営利目的の葬儀社が関わると著作権法違反にあたる為、葬儀社では責任を持つどころか、厳密には音源のスイッチを押すことすらできません。

音楽葬を行う場合は、JASRACと契約している葬儀社を選ぶか、別途に料金を払って音楽を使用できる権利を買わなければいけません。JASRACの著作権料は使用する曲数や使用する時間、会場の広さや収容人数などによって料金が異なります。

著作権の問題さえクリアすればどんな曲でも使えます。音楽葬では映画音楽、ビートルズなど洋楽のバラード曲などの要望も多く、故人の希望によっては歌謡曲や演歌、球団の応援歌も使用することもあります。

またクラシック音楽は著作権が切れたものが多く、モーツァルトのレクイエムなど荘厳な雰囲気のある曲が多い為、音楽葬には使いやすいでしょう。

ただし選曲によっては葬儀の雰囲気を壊すこともあります。参列者の顔ぶれを考えて、激しいハードロックやコミカルな曲は避けたほうがいいでしょう。またアニメやゲーム曲の場合は、特に希望や思い入れがなければ、歌詞のないサウンドトラックなどから選ぶ方が無難です。

JASRACに個人で著作権料を支払う場合、あらかじめ使う曲や会場の広さ、参列者の人数などを把握しておく必要がある為、手続が非常に面倒です。ただし自宅で葬儀を行う分には「営利目的」には当たらず著作権料の対象にならないと言われています。

そこで音楽葬の料金を調べたり、著作権などの手続をするのが面倒、無宗教の形式でしたいけれど流れや必要な物品が分からない、という人は多いです。

音楽葬そのものの費用は、演奏者の人数や支払う出演料などによって異なります。生演奏での音楽葬プランがある葬儀社では、演奏者込みで40万円から100万円のプランを用意している所が多いです。CD音源を使う場合はもっと安くなるでしょう。

音楽葬を希望する際には対応している葬儀社を探して相談した方が、余計な手間や費用がかからずに済むうえに、より心に残るプランの提案もしてくれるでしょう。複数の葬儀社から見積もりをとってみると、どこがお得かも分かります。